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コメント頂きました!(井川淳子・美術家)

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新宿での最終上映日にすべり込みで間に合った。
最初の短篇「いつか忘れさられる」は、不在の家族をめぐるサイレントフィルム。人の営みは淡々と
続いているが、家族の会話は聞こえない。皆が集ってもどこかがらんとした居間、光が反射する壁な
ど、家の描写がいつまでも目の裏に残る。サイレントであることが、家を浮き上がらせたのだろうか。
仏間には亡くなった家族の写真が額に入れて掲げられていた。すべての人はやって来て去っていく。
「短篇集 さりゆくもの」の5篇は、切なく愛しく、時にはぎょっとし、滑稽でもあって、その度に
私はジンとしたり、笑ったりしながらスクリーンを見つめていた。
今、こうやってそれぞれの感触を思い起こすと、映画こそが「さりゆくもの」なのだと気づかされる。
スクリーンに掲げられた一篇一篇が、部屋に掲げられていた去っていった人たちの写真と重なってい
く。
そして映画館とは、すべてを収める家のようにも思えてくる。

井川淳子(美術家)

画像は藍画廊での展示紹介ページからお借りしました。

https://www.tokyoartbeat.com/event/2021/32F0

井川淳子「いつか私は(天国篇5歌)」

素材: ゼラチン・シルバー・プリント サイズ: 可変 撮影年: 2020年

こちらの展示も素晴らしかったです。

http://nohako.com/exhibition/16-itsuka-junko-ikawa.html