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コメント頂きました!(辻豊史・映画監督『戦車闘争』)

映画『短編集 さりゆくもの』が面白い。2/20~3/5。新宿ケイズシネマ。
http://www.ks-cinema.com/movie/sariyukumono/
全5本のうち3本に女優のほたるさんが主演・共演している。ほたる祭りとも言え 
る短編集。

35mm+DCPという上映形態がいい。それは1本目の「いつか忘れさられる」

(監督・ほたる 撮影・芦澤明子)がフィルム撮りのサイレント映画だからだ。

フィルムで撮った映画をフィルムで映写する。映画館でぜひ目撃してほしい。
1本目の『いつか忘れさられる』から、2019年に急逝した櫻井拓也が主演の5本 
目の『もっとも小さい光』(監督・サトウトシキ)まで、どういうめぐり合わせ 
か、さりゆくものたちの映画、死の匂いが立ち込める作品集になっている。心に 
ずん、と残る。これはぜひ映画館で見た方がいい。

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5作の順序も含めてあの手この手で楽しめる良く練られた作品集で、1作1作に 
語るべきことがあるが、まずは『いつか忘れさられる』について。

比喩的な言い方をしたいわけではないのだが、映画はなぜサイレントを棄て、 
フィルムを棄てるのだろうという気持ちになった。サイレントもフィルムもまだ 
まだ追求できる表現・媒体だったのに、それこそ忘れられて行くのだろうか。
『いつか~』は、雪深い雪国のある家族の若き者の死に関する作品で、その雪国 
での生活のディティールがまず素晴らしい。台所で調理し、居間で家族で食事を 
するだけで、私は実際には見たことはないのだが、おそらく東北の家族はこんな 
ふうに暮らしているのろうというリアルさがある。ストーリーにその細部が絡み 
合い、見た直後だけでなく、見たあとにじわじわ来る作品だ。

かなり製作側の話になるが、編集クレジットがフィルム・クラフト。酒井正次さ 
んと金子尚樹さんの両方が関わっているのだろうか。私はある映画の編集で、金 
子さんの助手をし、酒井さんの卓の隣で延々と編集(ノンリニア)をしていたこ 
とがある。フィルム出身の金子さんと酒井さんのデジタル編集のタイムラインは 
美しい。トラックが一本あるシンプルなものだ。若い編集マンがやるように、い 
つでも別トラックに置いてある素材を選択しなおせるようなレイヤー型の編集で 
はなく、正解は1つであるというのがトラック1本主義なのだろう。

1本のタイムラインとはどういう意味か? どのショットを採用するか以上に金 
子さんや酒井さんが気を使うのは、カッティングのタイミングなのだ。私にはそ 
のように感じられた。要するに、2人とも、映画ではカットのタイミングに生命 
が宿ることを熟知している。事実、映画は、1フレーム多いか少ないかで、印象 
というか、演技の呼吸が変わってしまう表現なのだ。その事実は、かなり映画を 
見慣れている者にも知られていない。『いつか忘れさられる』の呼吸は、そのよ 
うなタイミングによってももたらされている。

そのように、登場人物の1つ1つのしぐさやに呼吸があり、気持ちが乗る。それ 
を見た観客は、タイトルの『いつか忘れさられる』をまざまざと実感させられ 
る。傑作である。

―辻豊史(映画監督『戦車闘争』)

辻監督には前作「キスして。」撮影から本当に多大なる協力をして頂きました。

「いつか忘れさられる」の完成試写(35mm)の時にも感想を頂いていて、

上映の時には…いろいろ相談しようと考えていたのですが。

監督作「戦車闘争」でお忙しい状況になってました。

先日亡くなった編集・金子さんの関わった作品です。

上映やっておりますので、お近くの方、ぜひご覧ください。

https://sensha-tousou.com

これから刷り上がるチラシにはコメント別バージョンが掲載されております。

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そう言えば、幼い頃の福島の家の台所はほんと寒かった…。

ほたる