手紙。
遺志はおそらく、耳をそばたてる者にしか囁かれない。
浴室に沈む死体のように、暴力を忘れ生きる人間の人生の背後に、数重なる耽溺のノイズの底に。遺志は、いつの間にか硬く沈む。
囁きが、なにかを喪う覚悟で感覚を凝らさなければ対峙できないとする人生の態度は、恐らく映画のフィルムでなにが映せるのかという問いと、じっと正座し待つほたるの立ち姿に通っているのかもしれない。ただそれはまだどちらかといえば、櫻井拓也の寒空の苛立ちの人生と、小野さやかの、世界の豊穣に出逢う喜びとに、感情移入してしまう自分にとっては、未だ分からない心境なのかもしれない、が…。
大事なひとが戻ってきていないことを、失語で見つめつづけることは、沈めることではない。
映画の無言のはじまりが、竹浪春花の素晴らしすぎる言葉で掘り起こされる瞬間に泣いた。
―木村文洋(映画監督『息衝く』)
木村監督は、出演作「京極真珠」の佐藤訪米監督・昨日コメントアップした井土紀州監督に師事し、
『へばの』の撮影・『愛のゆくえ(仮)』プロデュースはスピリチュアル・ムービーズの高橋さんと作品を作っていて、
今回コメントを誰に書いてもらおうかと考えた時に、監督に書いて欲しいと思い連絡を取りました。
…そうしたら、
先に小口監督が連絡を取っておりました。
そういえば、小口監督の上映会でトークイベント出ていた!
女性ゲストばかりの中に監督が小さくなりながらも、誠実にコメントしている姿がとても良かったです。
ほたる